■アメリカ東海岸音楽便り〜ボストン響のコンサート・レポートを中心に

ボストン響にイワン・フィッシャー登場

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April 26, 2003 8:00 PM

Ivan Fischer, conductor
Emanuel Ax, piano
Boston Symphony Orchestra
Boston Symphony Hall
Boston, MA

BARTOK : Dance Suite
MOZART : Piano Concerto No.20 in D minor, K.466
DVORAK : Symphony No.7

今季、ボストン交響楽団のシンフォニー・ホールでの最後のコンサート。七月からはタングルウッドに場所を移しコンサートを開くことになります。最後のコンサートとしてはプログラムの曲目は渋く、メインがドボルザークの交響曲7番、前半のプログラムがモーツァルトのピアノ協奏曲20番等になっています。指揮はCDでドボルザークの交響曲8・9番の新鮮な解釈を聴かせたイヴァン・フィッシャーさんです。

一曲目、バルトークの舞踏組曲はわたしにとっては初めて耳にする曲でありましたが、なかなか面白い曲でした。二曲目はエマニュエル・アックスさんをソリストに迎えてのモーツァルトのピアノ協奏曲20番。フィッシャーさんの濃厚なオーケストラ伴奏にアックスさんが淡々と応えていました。この一見アンバランスにも思える取り合わせの妙は素晴らしく、私は気に入りました。また第一楽章、第三楽章でベートーベン作曲によるカデンツァをアックスさんは弾きましたが、その部分がとても新鮮にまた見事に決まっていました。ちなみにこのアックスさんのことを私の妻は「不動産屋さん2号」と畏れ多くも呼んでいます。「1号」はリチャード・グードさんだそうな・・・

今季最後のプログラムはドボルザークの交響曲7番。これがまた最後を飾るにふさわしい素晴らしい演奏でした。フィッシャーはモーツァルトのときよりもさらに激しく熱の入った演奏で、浪花節的といってもいい演奏でした。しかし曲に対する熱い共感を感じさせてくれたのは間違いありません。わたしはこの曲のCDはアーノンクールさんがコンセルトヘボウを指揮したものしか持っていません。それも確かに悪い演奏ではありませんでしたが、8番や、9番と比較すると、地味な曲なんだと思わずにいられませんでした。しかしこういった熱い共感を持った演奏で聴くと7番が8番や9番とはまた違った魅力のある曲であることを気付かせてくれます。フィッシャーさんはアーノンクールさんの弟子らしく、二人とも曲に対する新鮮な面を聴かせるのが巧い指揮者だと思いますが、この曲に関する限りは強い愛情を持ったフィッシャーさんに軍配が上がりそうです。第四楽章最後の終結部もベートーベンの5番を思わせる何度も念を押すように圧倒的に盛り上げて締めくくりました。

演奏後は満場総立ちのすごい拍手でしたが、フィッシャーさんはそれに一度だけ応えただけで、後は今季で退団する奏者達に花を持たせていました。今季で退団する奏者達が次々と立ち上がり、花束が贈呈され、会場からはいつもにも増して暖かい拍手がいつまでも続きました。

コンサート終了後、私のお気に入りのフィッシャーさんの指揮するドボルザークの8番と9番のはいったCDを持って楽屋を訪ねました。フィッシャーさん気軽にサインに応じてくれたのですが、なんと「この演奏は素晴らしいが、ベストは『レジェンド』だ。」と教えてくれました。これは早速買いに行かないといけませんね。

《私のお気に入りのCD》
CDジャケットドボルザーク:交響曲第8・9番
イヴァン・フィッシャー指揮、ブタペスト祝祭管
PHILIPS UCCP-1036 (国内盤)

フィッシャーさん、この演奏のことをご自分でもよく分かっているのか、確かにベストに押すには躊躇しますが、この有名な聞きなれた曲において、いたるところで聞こえる新鮮な響きは只者ではなくやはり一聴に値すると思います。


(2003年5月12日、岩崎さん)