コンセルトヘボウのプロフィール

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 ここではコンセルトヘボウ管弦楽団の本拠地であり、オーケストラの個性の形成におそらく密接な関連を持ってきたと思われる、ホールとしてのコンセルトヘボウについて見ていきたいと思います。

CDジャケット まずプロフィールですが、これについての参考書としては例えば『200CD クラシックの名録音』(田中成和・船木文宏編,立風書房,1998)という書籍や、『アムステルダム、コンセルトヘボウの響き』(フィリップス,1991)というCDの解説書等があります。しかしこれらを引き写すだけでは能がありません。ここで再びカタログ作戦です。

 既に使用した『INVITO ポリグラムクラシックCD・LD総カタログ1995』には、「フィリップス物語」と題されたページがあり、レーベルの歴史が簡単にまとめられています。またこれとほぼ同内容のものがフィリップスの「超盤 SUPER BEST120」(1991年頃)や「BEST100」(1996年)「BEST50」(2000年)といった廉価シリーズ物のカタログ(CDサイズの小冊子)の冒頭にも掲載されていますが、いずれもコンセルトヘボウ管弦楽団についてはフィリップスの歴史の一部として簡単に言及されているに過ぎません。

クラシック深次元 ところがそれらに先立つ1990年頃の「NEW定盤」シリーズの金ピカの小冊子には「名門フィリップスが誘う、クラシック深次元。」と題されたエッセイ風の解説が、冒頭だけでなくカタログ本体と一体化した形で掲載されており、これがなかなかの力作なのです(写真左)。当時この冊子を店頭等で入手し現在までちゃんと保存している酔狂な御仁はあまりいないと思われますので、これを引用しながらコンセルトヘボウ管弦楽団のプロフィールを再構成してみるのも、それなりに意義があることかもしれません。もしかしたら著作権的には意義ではなく異議があると言われる恐れもありますが。

《「コンセルトヘボウ」はオランダ語で「コンサートホール」という意味の普通名詞だ。オランダには数多くのコンセルトヘボウがある。しかしアムステルダムの「コンセルトヘボウ」は、ここを根拠地とする同名の管弦楽団とともに、オランダだけではなく、世界を代表する存在だ。》

と始められています。日本人が大阪の「ザ・シンフォニーホール」という命名に感じる若干の違和感を、昔のオランダ人も「コンセルトヘボウ」に対して抱いたりしたのでしょうか。次に、

《1888年につくられたアムステルダム・コンセルトヘボウは世界でも指折りの音のいいホールとして知られている。ここと肩をならべることのできるのは、1869年につくられたウィーンのムジークフェラインザール(楽友協会ホール)と1900年に作られたボストンのシンフォニー・ホールだけ。》

と断言されています。第二次大戦の空襲で焼失したライプツィヒの旧ゲヴァントハウス・ホールは《ほんとうに音がよかった》そうですが、新ホールについては言及がありません。続いて、

《いま、これら19世紀のホールだけが、ふしぎな「音の美しさ」をそなえているのは、いったいなぜなのであろうか? 音響技術の発達した今日最新のホールがなぜそれを超えることができないのであろうか?》

との疑問が呈され、二つの仮説が示されています。

 などと最後は文学的な表現になっていたりしてなかなか面白いのですが、このあたりについては上記CD『アムステルダム、コンセルトヘボウの響き』のライナー・ノーツで、もう少し科学的な分析がなされています。要約しますと、

 このライナー・ノーツではコンセルトヘボウの音響特性について、菅野沖彦氏が他にもいろいろ専門的な解説を書かれており、いくつかの点でウィーンのムジークフェラインとの比較がなされています。

 まあこのへんについては『ウィーン、ムジークフェラインスザールの響き』の解説書も読んで相互チェックすべきなのでしょうが、本稿は学術論文や調査研究レポートの類ではありませんので、「コンセルトヘボウはムジークフェライン(ス)ザールより音がよいらしい」という結論のままにしておきたいと思います。

 そして菅野氏は、ホールの響きを色のイメージに例えて「カッパー・ゴールド」と表現されています。《音はものすごくきれいで、美しくて、豪華でだけれども、「イエロー・ゴールド」よりももっと「響き」がしっとりと落ち着いている》

 最後にデータ的なプロフィール。大ホールは変形シューボックス型(舞台背後が曲面)、収容人員2206人(席数2037席)。470席のリサイタル・ホールを併設。残響時間2.4秒(空席時)/2秒(満席時)。

 なお、オランダ室内管弦楽団もコンセルトヘボウを本拠地としているそうです。


(An die MusikクラシックCD試聴記)