交響曲第1番 ニ長調 Hob.T-1

「ハイドンの交響曲を全部聴こう」(略称「ハイドン・マラソン」)

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■ 楽曲について

 
作曲

1757年(ゲルラッハ1996年による)

編成

オーボエ2、ホルン2、ヴァイオリン2部、ヴィオラ、 通奏低音

構成

第1楽章:Presto
第2楽章:Andante
第3楽章:Presto

 

■ 録音データ

 
  録音年月

第1楽章

第2楽章 第3楽章
ドラティ盤 1972年6月

4:57

5:40 2:00

フィッシャー盤

1990年6月 5:07 6:03 2:09
 

■ 演奏について

CDジャケット
フィッシャー盤
(1-5番)

 今回の企画を開始するにあたり、ハイドンの交響曲第1番を何度も聴いてみました。その間、2種類の演奏を何度も聴き比べる、ということがハイドンの交響曲第1番の聴き方としてふさわしいのかどうかと逡巡することもありました。交響曲第1番といってもベートーヴェンやブラームスと違って、時代背景からしておそらくじっくり聴かれたことはなかったのではないかと思われたからです。発注者ですら、軽く聞き流していたのではないでしょうか。当時の貴族達にとってはそれが普通であったことでしょう。交響曲といってもごくありふれた機会音楽のひとつであったわけですね。

 曲の規模も小さいです。全曲を通して聴いても12分ほどにしかなりません。よほど注意して聴いていないと、あっという間に終わってしまいます。

 しかし、何度も聴いていると、ハイドンらしさがにじみ出ているように思われるから不思議です。

 第1楽章は駆け抜けるような弦楽器の音にホルンがファンファーレ風の旋律で乱入してくる活きの良い楽曲です。ドラティ盤でもフィッシャー盤でもチェンバロを伴って演奏されています。その後いかにもハイドン風の第2楽章が来ます。弦楽器だけのアンサンブルで、これはハイドンが後期になって聴かせる緩徐楽章での精緻・繊細な音楽を彷彿とさせるものです。この交響曲が本当に最初に作られた交響曲なのかどうか判然としないようですが、既にハイドンの個性が表れているように感じます。第3楽章は勢いよく終わって、いかにもフィナーレらしいです。まあ、急−緩−急の典型的な機会音楽なのかもしれませんが、じっくり聴くとそれなりに味わいがあるものですね。

 ドラティ盤は太陽の光がぱっと差し込むかのような輝かしい演奏です。録音は、若干古さを感じさせるものの、及第点でしょう。

 フィッシャー盤はその20年も後の録音だけに音質の面で圧倒的に有利です。音の分離が全く違います。第1楽章でホルンが乱入するときの格好良さったらありません。

 

(2007年6月2日掲載、An die MusikクラシックCD試聴記)