An die Musik 開設7周年記念 「大作曲家7人の交響曲第7番を聴く」

ブルックナー篇
ベイヌム指揮コンセルトヘボウ管

文:Fosterさん

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CDジャケット

交響曲第7番 ホ長調
エドゥアルド・ファン・ベイヌム指揮コンセルトヘボウ管弦楽団
録音:1953年5月、コンセルトヘボウ
Philips(輸入盤 464 950-2)

 

 「ブルックナー指揮者」という言葉がクラシック音楽好きの間ではよく用いられます。何を持ってしてブルックナー指揮者なのかというのはさておいて、ブルックナーがあまり得意ではない私からすれば世間でブルックナー指揮者と呼ばれている方の演奏はあまり好きではないのです。

 そんな私がブルックナーの交響曲第7番で最も気に入っている演奏は、ベイヌム指揮コンセルトヘボウ管弦楽団による演奏です。ベイヌムは世間的にはブルックナー指揮者としては認知されていないと思います。しかし、ここで挙げさせていただいた選集(7番の他に5番、8番、9番が入っています)はいずれも素晴しい出来であり、私個人の感想としてはベイヌムも立派なブルックナー指揮者であると言ってもいいように思うのです。

 さて、演奏内容ですが常のベイヌム同様にやや速めのテンポを基調とした演奏ですが、聴かせどころでは一気にテンポを落とすこともあり、どちらかといえばロマンティックな演奏にも感じます。ここら辺がブルックナー好きには耐えられないのかもしれませんが、私個人的にはわかりやすくて非常に好感が持てる解釈です。

 叙情的な旋律の美しさで知られる2楽章も感情に溺れることなく、実にセンスのよい旋律の奏で方をしています。

 3楽章では、跳ねるようなリズム感の表現が素晴しく、ともすれば退屈に感じがちなブルックナーのスケルツォが飽きることなく魅力的に聴こえます。

 4楽章も重厚さというよりは、勢いを感じさせる演奏になっています。

 たしかに、ブルックナーの交響曲を評する時に評論家が用いる「荘厳さ」、「神々しさ」、「神秘的」といった類のものは希薄なのかも知れませんが、もうひとつのブルックナーの交響曲演奏のスタイルとしてもっと多くの人に聴いてもらいたいと思っています。

 また、当時のコンセルトヘボウ管の魅惑的なサウンド、テクニックを味わうという意味でもお薦めの演奏ですので、是非御一聴のほどを。

 録音が古いので最後に音質について若干説明させていただきますが、録音はモノラルで行われていますが、聴いている上での不満感は特にありません。ブルックナーやマーラーのような巨大な曲でのモノラル録音はハンデを感じがちですが、ここではベイヌムが重厚さを追い求めていないということもあって、大きなマイナスにはなっていません。

 

伊東からのコメント

 

 Fosterさんが書いているとおり、この録音はモノラルなのですが、途中でそれを忘れてしまうほどの響きを聴き取ることができます。例のブラームスと並んで絶頂期のコンセルトヘボウ・サウンドを聴けるCDであるといえますね。

 なお、この録音はDECCAによるもので、プロデューサーはカルショウ、録音エンジニアはケネス・ウィルキンソンが担当しています。

 

(2005年11月13日、An die MusikクラシックCD試聴記)