An die Musik 開設7周年記念 「大作曲家7人の交響曲第7番を聴く」

ショスタコーヴィチ篇
バーンスタイン指揮シカゴ響

文:Fosterさん

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CDジャケット

交響曲第7番 ハ長調 作品60「レニングラード」
レナード・バーンスタイン指揮シカゴ交響楽団
録音:1988年6月、シカゴ オーケストラホールにおけるライブ録音
Deutsch Grammophon(輸入盤 427 632-2)
併録:交響曲第1番 作品10

 ショスタコーヴィチの交響曲第7番<レニングラード>は曲そのものが難しく、内容も非常にヘヴィです。それだけにこの曲は、曲を深く理解した指揮者と抜群に上手なオーケストラによる演奏で聴きたいと思っています。

 バーンスタインとシカゴ交響楽団とのコンビによる演奏は、この要求に応えてくれる素晴らしい演奏だと思います。ショスタコーヴィチ自身の前で彼の曲を演奏したこともあるバーンスタインの解釈は非常に自信に溢れたものとなっています。「ショスタコーヴィチの音楽は苦悩である。その交響曲は暗く、不安に満ちた悲痛な世界。」という彼のショスタコーヴィチに対する音楽観がひしひしと伝わってくる激しい演奏です。

 シカゴ交響楽団もブラスセクションを筆頭に持ち前の高い技術でバーンスタインの要求にダイナミックに応えています。このスケールの大きさ、激しい高揚に深い叙情、そしてオーケストラの抜群の技量。この曲の理想の演奏として推薦させていただきたいと思います。

 

伊東のコメント

 

 今回のシリーズで私は「大作曲家7人の交響曲第7番」の「7人の指揮者、7つのオーケストラ、7つのレーベル」に拘ってしまうという愚を犯しました。ブルックナーで早くもカラヤンのDG盤が登場したため、バーンスタイン指揮シカゴ響盤を取りあげられませんでしたが、これは私の本命盤のひとつです。

 シカゴ響という、おそらくは世界最強のブラスセクションを有するオーケストラを使って録音したバーンスタイン盤は極めて魅力的です。

 ショスタコーヴィチの音楽は政治・思想から切り離したり、ヴォルコフによる「ショスタコーヴィチの証言」から離れて解説されることが少ないと私は思っています。それは私の不満でもあるのですが、バーンスタイン盤は、ショスタコーヴィチの音楽は仮に音響だけであっても、聴き手を完全に圧倒することを教えてくれます。

 この曲を実演で聴いた人は、舞台に所狭しと並ぶオーケストラに目を見張ると思います。打楽器を含む大オーケストラに、作曲家はさらにトランペットを3本(4-6番)、ホルンを4本(5-8番)、トロンボーンを3本(4-6番)追加しています。

 この追加された金管セクションは極めて強大であり、「レニングラード」の音響上、最もおいしいところをさらっていきます。

 私はバーンスタイン盤を聴く度に、ホルンの追加舞台として参加してみたいという野望を抱くのですが、その理由は第4楽章にあります。

 終盤にさしかかった583小節目、この第4楽章が緊張を孕みつつ最高度に盛り上がってくるところで、フォルテで朗々と演奏されるホルンのパートソロはこの追加部隊に割り当てられています。このあたりのかっこ良さといったら他に類例がありません。音楽はそのまま膨張に膨張を続け、壮大なファンファーレを奏でつつ最強音で終了するのですが、そのファンファーレもこの追加部隊が決めています。

 かつてベルグルンド指揮の「レニングラード」を取りあげた際にも書きましたが、私はショスタコーヴィチの音楽をもっと娯楽として楽しんでもいいのではないかと常々考えています。血湧き肉躍るこの強烈なバーンスタイン盤を聴いてスカッとするのはオーケストラファンにとってごく普通のことだと思うのですが、いかがでしょう。

 

(2005年11月21日、An die MusikクラシックCD試聴記)