ノイマン指揮のブルックナー交響曲第1番を聴く

文:Sagittariusさん

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CDジャケット

ブルックナー
交響曲第1番ハ短調
ノイマン指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管
録音:1965年12月13-14日、ライプツィヒ救世主教会(ハイランツキルヒェ)
BERLIN Classics(輸入盤 0094662BC)

 ヴァーツラフ・ノイマンがライプツィヒ時代に残した録音の中の最も優れたものの一つ、ブルックナーの交響曲第1番が今年(2002年)5月に初めてCDとして発売されました。ローベルト・ハース編纂のリンツ版(1865/66年)による演奏です。

 この演奏の美しさは他に比類を見ません。ホルンはおそらくペーター・ダムが吹いているものと思われます。木管群の純粋な美しさは、例えば同じくドイツの一流楽団とは言えベルリン・フィルでは望むらくもないレベルです。それに交響曲第1番(のリンツ版)はまだ「親切な」取り巻きから色々と口出しされたり、ハンス・リックの執拗な攻撃に曝される前の傷付かずのブルックナーの純粋な感性が良く表われている曲だと思います。それを十分に演奏していると言う点では私の知る限りこの演奏が断然優れていると思います。因みに80年代前半にNHK-FMで放送された大作曲家の時間ブルックナーで土田英三郎氏が当時既に廃盤久しかったこの録音をわざわざ選んだ理由は、私には十分理解できました。

 一方、作品としての交響曲第1番の完成度はよく言われるように最初の交響曲(実は最初ではない事は今や良く知られています)としての未熟さが見られるどころか、結局のところブルックナーは第1番で達成した完成度を第6番を作曲するまで凌駕出来なかったのではないかと考えています。(もちろん例えば第5番は構想の大きさと言う点で交響曲史上画期的な作品で、別の基準で評価すべきとは思いますが、作品としてある種のバランスの取り難さがあり、多くの指揮者達の躓きの石となっています。)またここで聞かれる新鮮な感性はブルックナーと言えども一回限りだったのではないかと思います。

 このCDはとかく無視されがちなブルックナーの初期の交響曲の再評価を促す為にも多くの人に聞いていただきたい録音です。

 

2002年7月17日掲載、An die MusikクラシックCD試聴記