プレヴィンのラフマニノフを聴く

文:アントン・ミントンさん

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CDジャケット

ラフマニノフ
交響曲全集
「死の島」「ヴォーカリーズ」
「アレコ」からの抜粋、「交響的舞曲」
アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団
録音:1973-1977年
EMI(輸入盤 7 64530 2 )3枚組

 ラフマニノフの第二交響曲については、すでに多くのことが語られています。しかもプレヴィンのものといえば名盤中の名盤で、ほかにも多くのHPで取り上げられています。にもかかわらずあえてここでご紹介するのは、第2番以外の演奏も大変素晴らしいからです。

 たとえばこのCDに収められている交響曲第1番ニ短調はどうでしょう。おそらくここで使われているスコアは原典盤と呼ばれているものでしょう。打楽器のパートが派手だからです。しかし他の演奏と同様、プレヴィンは決して外面的な効果を狙っていません。つまり、これみよがしなハイスピードとか、ロシア的な金管の派手な咆哮、陶酔的なカンターヴィレなどをここに見出すことはないでしょう。あくまで「楽譜そのものに語らせる」というコンセプトがここでも貫かれているのです。本来私はそういう演奏が好きではなく、指揮者自身の個性を主張してぐいぐい楽員を引っ張っていくような演奏が好きなのですが、このCDを聴いてプレヴィンの素晴らしさに開眼しました。ここに聞かれる演奏は、一言で言うと「熱い」のです。信頼する指揮者のもと、この音楽の持つ魅力を肌で感じる楽員たちが夢中で演奏している様子がわかります。そしてなによりプレヴィン自身が燃えています。時々聞かれる力のこもった唸り声はその証拠でしょう。楽曲そのものの魅力を楽員と共に味わいながら、一緒にオンガクする喜び! これこそプレヴィンの魅力なのでしょう。ちなみに、私はラフマニノフそのものも最近聴くことが少なく、たまたまHMVのポイントがたまったので「久しぶりにラフでも聞いてみようか」と軽い気持で購入したのですが、このCDを聴いてあらためてラフマニノフが好きになりました。

 他の曲、例えば下手をすると軽いショーピースのようになってしまう交響曲第3番も、このCDでは交響曲らしい威厳を備えた存在感のある演奏になっています。そして一番最後に入っている交響的舞曲(シンフォニックダンス)の素晴らしいこと! 第1交響曲の熱い息遣いがそのまま保たれているようで、本当に気持の良い演奏です。

 交響曲第2番、ピアノ協奏曲第2、第3番以外のラフマニノフを聴いてみたい方には是非おすすめです。価格も確か3000円しなかったように思います。

 

2002年6月6日掲載、An die MusikクラシックCD試聴記