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2010年7月

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CD2010年7月22日(木):マッケラス

 既に旧聞に属することかもしれませんが、HMVのサイトで、マッケラスが7月14日に84歳で亡くなったという記事を目にしました。詳しくはこちらをご覧ください。

 春先に「名盤の探求」を連載していたとき、私はモーツァルトの「プラハ」ベートーヴェンの「運命」ブラームスの交響曲第4番でマッケラス盤を取り上げました。しかも、「新時代の録音」としてです。このような高齢の指揮者が「円熟」というような、クラシック音楽の世界でよく使われるやや安易な誉め言葉とは無縁の意欲的な音楽活動を継続していたことは驚嘆すべきことでした。一体いつまで指揮を続けられるかと思っていましたが、ついに天に召されてしまいました。私は音楽家の訃報をホームページや掲示板で云々するのを避けてきたのですが、マッケラスの場合は今後にも大きく期待していただけに本当に残念であります。最も心残りなのは、実演に接する機会が一度もなかったことです。せめてマッケラスが残してくれた名盤の数々を大事に聴いていきたいものです。

 

CD2010年7月20日(火):iPodウォーキングとツイッターについて

iPodウォーキング

 以前ツイッターに書いていたのですが、ウォーキング時のiPod利用についてここでも書いておきます。

 私にはiPodのような携帯用プレーヤーは一生無縁だろうと思っていたのですが、加齢と運動不足で体力が目に見えるように落ちてきたため、簡単な運動を春先から始めました。と言っても、いきなりジョギングをすると死んでしまう場合があるので、弱気な私が選んだのはウォーキングです。近所に別所沼公園があるので、そこを歩きます。埼玉県は親切にもそこにジョギングやウォーキングをする人のため歩きやすいトリムコースまで整備してくれています。1周は940メートル。ここを6周前後歩くわけです。この公園には「花と緑の散歩道」というこれまた散策専用のレーンがあるので、行って帰ってくると大体7〜9キロくらいは歩きます。

 この時間にiPodを使うことにしたわけですが、歩きながらクラシック音楽なんて聴けるのかと心配していたのは杞憂に終わり、なかなか快適であります。ただし、ウォーキングに向く曲・向かない曲はあるようです。これまでの実験結果をまとめると以下のようになります。なお、下記はあくまでもウォーキングのときに聴いてどうだったかという点をコメントしているのであって、演奏評とは全く関係ないと思ってください。

バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻
ピアノ:リヒテル
残念ながら全くウォーキングには合いませんね。平均律はどこからどのように聴いても楽しめるかなと非常に期待していたのですが、24曲を聴くのに難儀しました。リヒテル盤はお気に入りだったのですが、グルダの演奏にしておくべきだったかもしれません。

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」
カラヤン指揮ベルリン・フィル
(1962年録音)
「ベートーヴェンで歩けるかね? いくら何でもねえ」と最初は思っていたのですが、歩きながら感動してしまい、しかも意気軒昂になりました。背筋がぴんと伸び、姿勢良く歩けます。すばらしい!

ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
カラヤン指揮ベルリン・フィル
(1962年録音)
「英雄」が良かったので思いきって「英雄」に挑戦。これまた気宇壮大な気分になり、ウォーキングに最適。ただし、気宇壮大になりすぎて手の振りが大きくなります。端から見るとちょっと恥ずかしいかもしれません。
なお、カラヤンが1962年に録音したベートーヴェン全集は全曲をウォーキングで聴いてみましたが、どれもウォーキング向きです。テンポがちょうど酔うのかもしれませんね。

 ベートーヴェンの次はモーツァルトです。

モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」
アバド指揮ロンドン響

歩くのに適した曲を選んだつもりでしたが、可もなく不可もなくというところでした。当時のアバドの演奏は大好きなのですが・・・。

ドヴォルザーク:交響曲第7番、第8番
マッケラス指揮フィルハーモニア管

これも音が鳴っているだけです。曲や演奏によりウォーキングに合う、合わないということはあるようです。

ブルックナー:交響曲第7番
マゼール指揮ベルリン・フィル

予想されたことですが、これほどウォーキングに向かない曲はないかもしれません。ブルックナー開始など、屋外ではまるで聴き取れません。第1楽章のみでギブアップです。

ワーグナー:序曲・前奏曲集
テンシュテット指揮ベルリン・フィル
「タンホイザー」序曲、「リエンツィ」序曲、「さまよえるオランダ人」序曲、「ニュールンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲を聴きました。超弩級の名演揃いでありながら、ウォーキングには不向きです。例えば、「タンホイザー」はなんだか訳が分からないうちに終わってしまいました。

ブラームス:交響曲全集
ラトル指揮ベルリン・フィル
念のためと思いブラームスでも実験しました。これが予想外にウォーキングにマッチしています。意外なものですね。
特に交響曲第2番の第1楽章を聴いているときには、今にも雨が降ってきそうな曇天だったのに、本当に日が差してきたような印象を受けました。歩きながら大きな感銘を受けました。オーディオルームでこのような体験をしたことはありません。

ブラームス:交響曲全集
ジュリーニ指揮ウィーン・フィル

ラトル盤の後、ジュリーニ盤をiPodに入れて出かけました。スローテンポのブラームスはどうかという実験でした。これは大変なことになりました。スローテンポである上に、あまりにも演奏が美しすぎるため、聴き惚れてしまい、その結果歩くペースがどんどん落ちてきます。情けないことに私よりずっとご高齢の方々に次から次へと背後から抜かれてしまうという有様でした。ウォーキングしながら聴いても聴き惚れてしまうジュリーニとウィーン・フィルの演奏には今更ながら驚嘆します。例えば第2番の第2楽章に陶然としつつウォーキングしていていいものでしょうか。危険な気もします。

ベートーヴェン:交響曲全集(交響曲第9番を除く)
ジュリーニ指揮スカラ座フィル
ジュリーニだからと言ってすべてがウォーキングに堪えうるわけではないのですが、スカラ座フィルとのベートーヴェン演奏もウォーキングに向いています。このベートーヴェンは若干特殊であると私は思っているのですが、ベートーヴェンであることに何ら変わりはなく、聴き手の心を鼓舞します。また、涼しい木陰の中で「運命」の第2楽章や「田園」の第2楽章を聴くと、至福に包まれます。音楽っていいですねえ。こんな経験ができるならiPodをもっと早く買って使っているべきでした。

ブラームス:交響曲全集
カラヤン指揮ベルリン・フィル
(1983-88年録音)
オーディオルームで聴くととてつもない演奏なのですが、ウォーキングには向きませんでした。ブラームスが全部向いているわけではなさそうです。不思議なほど音が素通りしていきました。

 実験の大まかな結果は以上です。まだ実験途上ではありますが、今のところベートーヴェンが最もウォーキングには向いているように思われます。聴き手を鼓舞し、姿勢を良くするためです。雄大な気持ちになり手を大きく振ってしまうところが自分でもおかしいのですが、それはご愛敬というものでしょう。

 ウォーキングの前には15分ほど筋トレをしていますし、最近は体力もついてきたようなのでジョギングも取り入れるようにしました。冬場にはスキーでコブ斜面を息ひとつ切らせないようにして滑走するのを目標にしていますが、そこまでたどり着けるように頑張りたいところです。


 ツイッターについて

 しばらく実験的にツイッターにてつぶやいておりましたが、An die Musikのトップページに直近のつぶやきを掲載するのを控えます。


 

(An die MusikクラシックCD試聴記)