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ベイヌム指揮コンセルトヘボウ管弦楽団ディスクレビュー
(コメントつき不完全ディスコグラフィ)
■ PART 5. RADIO RECORDING-3 ■

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■ PART 5. RADIO RECORDING-3 ■

 

CDジャケット

“Anthology of the Royal Concertgebouw Orchestra Volume I:1935?1950 LIVE - The Radio Recordings”
CD:Q Disc 97017 〔輸入盤(2003)〕

 このCDセットは、コンセルトへボウ管弦楽団のライヴ録音を年代順に編纂するというシリーズの第1巻。これ自体が13枚組で、最終的には全6巻になるというから大ボリュームのコレクションとなるわけだが、年代順の編集なのでベイヌムに関しては本盤と次の第2巻にしか出番がない。

 さすがにベイヌムのボックスセットで主要な録音は出尽くしたものか、今回収録されているのは超マイナーなコンチェルト一曲だけ。コンセルトヘボウではなくベイヌムだけにしか興味のない人にとって、16分ほどのこの曲のために当セットを購入するのはつらかろう。

マリピエロ:チェロ協奏曲 〔CD5/録音:1941年1月21日/mono/ライヴ〕

 チェロ:エンリコ・マイナルディ
 1937年に作曲されたというこの曲は、どうも捉えどころのない印象の作品で、演奏の良し悪しもよくわからない。音質も冴えず、ことベイヌムに関する限り、このCDセットは存在しなくてもさっぱり困らないものだといえよう(こらこら…)。

 

CDジャケット

“Anthology of the Royal Concertgebouw Orchestra Volume U:1950?1960 LIVE - The Radio Recordings”
CD:Q Disc MCCL97018 〔輸入盤(2003)〕

 意外に早く出た第2巻。一枚増えて14枚組だ。ベイヌムに関してはやはりマイナーな作品が並び、落穂拾いの感が強い。初めて聴く曲ばかりで馴染みがないし他の演奏との聴き比べもできず、これではベイヌムの個性を聞き取ることが難しい。やはり注目はマーラーの交響曲第3番ということになるだろう。

フェルミューレン:「さまよえるオランダ人」〜パッサカリアとコルテージュ 〔CD11/録音:1957年3月17日〕

 舞台劇のための音楽の一部で、1930年の曲。モチーフは海とのことで、15分強の曲だがリズムにあまり変化がないのはそのせいか。後半(おそらく「コルテージュ」の部分)はやや叙情的になり、華麗に終る。

フェルミューレン:交響曲第2番「新たな日への前奏曲」 〔CD11/録音:1956年7月5日〕

 1920年に作曲されたが、初演(この録音)まで顧みられなかったという作品。23分ほどの単一楽章の曲で、印象的なメロディが出てくるわけではないものの、多彩なオーケストレーションを楽しめる。

ヘンケマンス:ヴァイオリン協奏曲 〔CD4/録音:1951年12月23日〕

 ヴァイオリン:テオ・オロフ
 まったく同じ演奏者によって1954年にフィリップスへ録音されている作品。

ヘンケマンス:ハープ協奏曲 〔CD9/録音:1956年12月19日〕

 ハープ:フィア・ベルフート
 ベルフート(又はベルゴウ,1909-1993)は当時の首席ハープ奏者。ロッテルダムで初演された翌日のアムステルダム録音とのこと。

 この演奏はハープの独奏楽器としての限界ゆえ期待に添わなかった、と解説にあるが、協奏曲ということを意識しなければけっこう面白く聴くことができる。精妙な雰囲気のオーケストラ・パートではコンセルトヘボウ管のよさが出ている。

アントン・ヴァン・デル・ホルスト:交響曲第1番 〔CD5/録音:1951年10月18日〕

 作曲者は「惑星」のHOLSTではなくHORST。1935年から1939年にかけて作曲されたこの曲には当時の不穏で重苦しい社会や政治の情勢が反映されている、と解説にある通りの内容だ。1942年の初演もベイヌムとコンセルトヘボウ管だったとのことだが、あまりこのコンビの持ち味には合わない曲という気もする。激しく盛り上がる箇所では音が割れ気味となるのも減点要因。

マーラー:交響曲第3番 〔CD10,11/録音:1957年7月14日〕

 アルト:モーリーン・フォレスター
 合唱:アムステルダム・トーンクンスト合唱団(女声)、ツァングルスト少年合唱団

 こんな録音を正規CDで聴くことができるとは…嬉しい驚きだ。提供元のバイエルン放送アーカイブはQ DISCのコンセルトヘボウものに(おそらく)初登場。オランダ国外の放送局にまで音源の捜索範囲を拡大しているようで、まことに頼もしい限りだ。この調子で貴重な演奏をどんどん発掘してもらいたいところ。

 メンゲルベルク後のコンセルトヘボウにおけるマーラーの伝統は、クーベリックやクレンペラーらの常連ゲストによって守られていたかのような印象があったのだが、それというのはベイヌムがマーラーの録音をほとんど残さなかったため、この作曲家にさほど熱心ではなかったように思われたからだ。しかしこの大曲をレパートリーにしていたとなると、その先入観は大幅に修正する必要があるだろう。

 さて演奏だが、シャイーのように豊饒でグラマラスなマーラーではなくやや軽量級、シャープでキビキビした表現となっている。しかしオーケストラの音色にコクがあるので、独特の心地よい味わいだ。こんな演奏でマーラーの他の曲も聴けたら、と思わせる。オーケストラも上手く、トロンボーンのソロなどは圧倒的。

 二つだけ文句をつけておくと、まず数箇所にあるわずかな音飛びは、元のテープがそうなっていたのだろうから仕方ないものの、もうちょっと音楽的に納得できる修正を施すことはできなかったのだろうか。また第1〜第5楽章をCD10に収めて終楽章(と別の曲)をCD11としているが、この曲の場合CDの交換箇所は第1楽章と第2楽章の間として欲しかった。どうでもいいことのようだが、例えばシカゴ響自主制作盤の同曲(マルティノン指揮)では意図的にそのようにされているので。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番 〔CD9/録音:1956年7月12日〕

 ピアノ:アニー・フィッシャー
 ジャケットには指揮がベイヌムとクレジットされているが、ブックレットの解説ではクレンペラー指揮と書かれている。聴いてみたところ、デモーニッシュな威圧感と醒めた表情、確かにクレンペラーだと思わせる演奏。とすると、「クレンペラーのページ」で伊東さんが紹介されている音源なのだろうか。


(An die MusikクラシックCD試聴記)