ARCHIVE OF WHAT'S NEW ?
99年12月

アーカイブのインデックス ホームページ WHAT'S NEW


12月30日:1年を振り返って

「An die Musik」今年の更新は今日で終わりです。1年間、ご愛顧ありがとうございました。先ほど昨年末のカウンターの数字を調べてみたら、4,200程度でした。本日夕方には57,800でしたから、今年だけで実に53,600件のアクセスがあったことになります。我ながら驚きでした。毎日忘れずに当ページを訪問して下さっている読者の方々、本当にありがとうございましたm(__)m。

振り返ってみますと、1年間たくさんのCDを聴き、たくさんの文章を書きました。結構すごい量ですね(^^ゞ。駄文ではありますが、私の貧弱な語彙を何とか使い回して、音楽を聴く喜びや感動を表現してきたつもりです。ホームページにCD試聴記を書くようになって、私の音楽に対する理解度が急激に高まったのは予期せぬ収穫でした。嬉しい副産物であります。「表現する」のは本当に楽しいことですね。「An die Musik」に接していて一番楽しんでいたのは他ならぬ私だったことでしょう。

どうしても「表現」したくなったこともありました。オルフェオのCDを聴き、感動のあまり突然「クーベリックのページ」を開設してしまいました。あれは自分でも予期していなかった行動でした。来年は「クーベリックのページ」を少しずつ更新し始めるつもりです。

一方、「シュターツカペレ・ドレスデンのページ」は「An die Musik」の企画段階から構想していたものであるにもかかわらず、到底自分には作れそうもないと諦めていたものです。が、どういうわけか、私がこのオケの熱烈なファンであることを行間から読み取った熱心な読者の薦めで開設を決意しました。スシ桃さん、そしてMさん、本当にありがとうございました。お二人は「シュターツカペレ・ドレスデンのページ」の生みの親であります。特にお師匠スシ桃さんからは激励のメールをいつもいただき、感謝しております。せっかく生まれたおそらく日本で唯一のドレスデンのページです。どうせなら「クレンペラーのページ」のように徹底的にやろうと思っています。乞うご期待下さい。

さて、私にとって、この1年は忘れられない重要な年になりました。公私ともにいろいろなことが立て続けに起こりましたし、今までになく多忙でした。最高の想い出といえば、8月にみずなちゃんが誕生したことです。自分の子供を持つようになりますと、街の風景も変わって見えるようになりました。街を歩いていると、それまでは全く気がつかなかったことがたくさん見えてきます。世の中に妊婦がいかに多いかということや、小さな子供がどのようにしているかなど、女房さんの妊娠を機に、目に飛び込んでくるものが変化してきました。ちょっと世界が広くなったような気がします。

妊娠8ヶ月の女房さんと私。みずなちゃんはまだお腹の中でした。妊娠8ヶ月の女房さんと私。みずなちゃんはまだお腹の中です(99年6月12日撮影)。

女房さんは、クラシック音楽を聴きまくるという妙な趣味を持つ亭主に翻弄され、大変な1年を送ったはずです。妊婦でありながら、胎教にはどう考えても好ましくなさそうなマーラー、ブルックナー、R.シュトラウス、バルトークなどをさんざん聴かされ、哀れでありました。山ほどCDを買う亭主との家庭内闘争にもすっかり疲れ果てたようです。よく辛抱してくれたものです。女房さん、ごめんなさいね<m(__)m>。しかし、女房さん、ついこの前までは妊婦であったわけですから、人体というのは不思議です。

今年は女房さん、本当に奮戦しました。育児に疲れ、やせ細ってきたり、育児ノイローゼになりかけたりと大変でした。1月からは女房さんも職場に復帰しますので、また忙しい毎日になると思います。よくやっているなあ。本当に感心します。がんばれ、女房さん。

さて、いよいよ年末。明日はみずなちゃんを連れて私の田舎である福島に帰省いたします。行きも帰りも新幹線です。みずなちゃんにとっては初の大旅行。「An die Musik」の更新は1月3日までおやすみします。ただし、ノートパソコンを持参しますのでゲストブックでお目にかかれるでしょう。それでは皆さん、よいお年を!


12月29日:超短期企画*隣町のオケを聴く*シリーズ、最終回「ブロムシュテット登場(後編)」を追加しました。

こういうシリーズは作っている本人は最高に楽しいです。読者の方々からの反応は今ひとつでしたが、できればもう少し時間をかけてやってみたいところです。特に70年代後半から80年代のゲヴァントハウス管をもっと扱いたかったですね。そういうホームページは他にないのかしら?ないのであれば私が...といいたいところですが、オケものでは「シュターツカペレ・ドレスデンのページ」がありますから、ゲヴァントハウス管だけに寄り道するわけにもいきません。この辺にしておきましょうか。


12月28日:CD試聴記に超短期企画*隣町のオケを聴く*シリーズ第5回、「ブロムシュテット登場(前編)」を追加しました。

超短期企画として始めたこの「隣町のオケを聴く」シリーズですが、いざ始めてみると、いろいろ書きたいことがあって、なかなか終わりません。4回こっきりで終わろうと思ったのに、今日で第5回目。今年中に何とか終わらせねば!明日はいよいよ無理矢理の第6回、感動の完結編であります。乞うご期待!


12月27日:やっと届いたCD

夏の盛りに注文していたCDがやっと届きました。注文した日付を確認してみたところ、何と8月1日(◎-◎)。4ヶ月も待ったCDというのも珍しいです。しかも、中身は現物が到着するまでよく分からない(!)という摩訶不思議なCDでした。そのCDとは以下のものです。

CDジャケット450 Jahre Staatskapelle Dresden
Grosse Werke unter grossen Dirigenten
BERLIN Classics(輸入盤 0093942BC)

これはシュターツカペレ・ドレスデン450周年記念CDです。BERLIN Classicsがその膨大な音源から、450周年記念にふさわしい録音を選んで7枚組のボックスセットにしました。値段は7,000円。輸入盤ですから、入荷時期等がはっきりしないのは避けられないとしても、収録曲も不明のまま、到着がこんなに遅くなったのにはびっくりでした。私はこのCDはもう入荷してこないものだと諦めていたのです。

さて、7枚組のCDの中身です。調べてみたら、ほとんど私が持っている音源でした(^^ゞ。が、それでも価値は十分あります。中には私がが存在さえ気がつかなかった録音も含まれていたからです。その代表はコンヴィチュニー指揮によるモーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」(55年録音)。「ほう、こんな録音があったのか。試しに聴いてみよう」と思って聴き始めたら、もう止められません。猛烈に活きの良い演奏で、一気に最後まで聴き通してしまいました。コンヴィチュニーは当団とベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」を同じ55年に録音していますが、その名演に匹敵するすばらしい演奏でした。もちろんモノラルながら、音質も最高。コンヴィチュニーをまた見直してしまいました。

さすがに7枚もあると、「何でこの曲を入れたのか?」と疑問に思う選曲もあるのですが、それがどれであるかは秘密にしておきましょう。大方は当団を代表する名録音ばかりです。また、既に持っているCDでも新たに聴き直すと、驚きの連続であったことも書き加えておきましょう。例えば、CD-1のトップに収録されているR.シュトラウスの歌劇「影のない女」からの抜粋、「再び見つかった鷹よ」(カール・ベーム指揮、42年録音)には身体を金縛りにされるような衝撃を受けました。ベームのR.シュトラウスには本当に痺れさせられますね。単体のCDではBERLIN ClassicsのDOKUMENTE 0125 002で聴けるのですが、7枚組CDの最初からこんな超絶的演奏に出会いますと、インパクトがいっそう大きく感じられるのです。もっとも、これらは将来「シュターツカペレ・ドレスデンのページ」でご紹介することになりますから、今回はこの辺にしておきましょう(^^ゞ。

なお、収録曲を知りたいという人もいらっしゃると思いますので、以下に書いておきます。

CD-1

CD-2

CD-3

CD-4

CD-5

CD-6

CD-7


12月26日:紙ジャケットCD

久しぶりにCDを買いに街へ出ました。お目当ては近頃発売されたドイツ・グラモフォンの紙ジャケットCD。往年の名盤が、OIBPによるリマスタリングを施され、しかもオリジナル・ジャケットで発売されるといいます。商品ラインナップは豪華です。中でも目を引いたのは、クーベリックの指揮したスメタナ「わが祖国」(ボストン響、71年録音)とフルトヴェングラー指揮のシューマン交響曲第4番(ベルリンフィル、53年録音)です。「これは必ず買わねば!」と思い、CDショップにダッシュ。

しかし、現物を手にしてがっくりしました。品物は、とても薄っぺらい紙ジャケットで、重量感も何もありません。確かに表(おもて)だけを見ると美麗ジャケットなのですが、「買いたい!」という気を全く起こさせません。結局そのシリーズのCDは1枚も買いませんでした。

さて、グラモフォンはどうしてあんな粗末な作りのCDを発売する気になったのでしょうか?オリジナルジャケットさえ使えば、売れると思っているのでしょうか。LP時代、クーベリックの「わが祖国」はボックスセットで売られていたはずです。その豪華さといったら感涙ものでした。それがわずか数ミリの紙ジャケットでぺらぺらになってしまうとは。懐古主義と一笑に付されることは私も分かっていますが、どうもやりきれない思いがします。

ただ、私は紙ジャケットCDが全部けしからんといっているわけではありません。CD試聴記で何度か取り上げておりますが、SONYのMASTERWORKS HERITAGEシリーズや、TELDECのTELEFUNKEN LEGACYシリーズは、値段も安く、音質もよく、しかも写真が豊富で解説が楽しいという本当に丁寧な作りのCDばかりで、「買って良かった!また1枚ほしい!」と思わせるのに十分です。今日もグラモフォンの紙ジャケットCDは中止にし、MASTERWORKS HERITAGEシリーズのアルバン・ベルク「ヴォツェック、他」を買ってきました。これはミトロプーロス指揮ニューヨークフィルの有名な51年ライブです。輸入盤で2枚組3,500円ほどでしたが、しっかりとしたリブレットまでついていて実にすばらしいCDです。CDをプレーヤーにかけて聴く前から感心してしまいます。どうしてこのようなCDをグラモフォンは作らないのでしょうか?巨大レーベルの殿様商売ということなのでしょうか。全く不思議であります。


12月24日:中村紘子

中村紘子さんの話題の本、「どこか古典派(どこかくらしっく)」(中央公論新社)を読んでみました。日経新聞に連載していたショートエッセイをまとめたもので、どこからでも気軽に読める作りになっています。速読の技術をマスターしている人であれば、本屋で立ち読みできてしまいそうな軽さです。

ああいう軽い文章を読んでおりますと、ちょっと安心します。中村紘子さんの他の著書を読んだことがある人ならばよく分かるでしょう。中村紘子さんの他の著書では、文章書きを本職としないはずのピアニストの筆力に圧倒されるのです。特に「チャイコフスキー・コンクール」(中央文庫)、「ピアニストという蛮族がいる」(文春文庫)の2冊は大変重厚な力作です。今回のショートエッセイとは違って、これらは本格的な読み物で、最初に出会ったときは私はあまりの重量感に驚愕したことをまざまざと覚えています。

最初、「どうせピアニストが片手間に書いた文章だろう」と半分馬鹿にして読み始めたところ、そうではありません。二つの著作とも、下調べからかなり力を入れて書いた本格的なもので、ピアニストでなければまず書けないであろう深い洞察力に裏付けられています。ストーリーも面白く、薄手の本ではないにもかかわらず、迫真の場面が続くので一気に読んでしまいます。私は驚き呆れ、「ピアニストとして名を成していながら、これほどの文章を書けるのでは、仮にピアニストをやめても、もの書きをして生きていけるのではないか」と本気で思いました。ひとつの才能にさえ恵まれない人が世の中にはほとんどであるのに、二つの才能を持っているなんて、何と贅沢な人でしょうか。世の中は全く不公平であります。


12月23日:クリスマス・ソング

昨日は「ときめきウィークエンド」でジョン・レノンのCDをご紹介しました。繰り返しますが、ジョンの"Happy Xmas(War is over)"はジャンルを超えた名曲だと思います。クラシックファンの方もぜひご一聴下さい。

クラシックのホームページでポップスを取り上げると「この人はどうかしちゃったのか?」と思われてしまいそうですが、本日もポップスを取り上げます。何卒ご容赦下さいm(__)m。

クリスマス・ソングについて。日本語のクリスマス・ソングでは何が好きかといいますと、いろいろあります。おじさん丸出しですが、まず、松田聖子の「恋人がサンタ・クロース」(ひぇぇぇぇえ)。松任谷由美の作詞・作曲ですが、歌は松任谷ではなく、絶対松田聖子でなくてはいけません( ̄^ ̄)。あの曲は松田聖子にぴったりの曲で、他の人が歌うのを聴くのはとても堪えられません。他にもあります。SPEEDの「ホワイト・ラブ」!。え?いい加減にしろって?いえいえ、本気なんです。我が家にはCDもあります。実はこの曲、女房さんが大好きで、カラオケの持ち歌にしているほどであります。私も大好きです。アイドルだからって、馬鹿にしてはいけません。

他にもあります。というより、日本の曲ではベストと考えているものがありますのでご紹介します。

CDジャケット広瀬香美(ひろせ こうみ)
SUCCESS STORY
録音:1993年
VICTOR(国内盤 VICL-489)

広瀬香美は国立音大作曲科を卒業した売れっ子作曲家です。なぜか冬になるとヒット曲が出ます(^^ゞ。広瀬香美は自分の本領は作曲家であるとたびたび主張していますが、一般的にはシンガーとして有名で、よく通るハイトーンの声が売りであります。なんでも、毎日2時間のボイストレーニングを欠かさないのだとか。声を維持するのも大変なんですね。

この広瀬香美が93年に放った「SUCCESS STORY」。「ロマンスの神様」「How to love」など、まことに不埒な曲(^^ゞが収録されているのですが、これは聴き応え満点の傑作アルバムであります。作曲家としても絶好調だった頃の作品集で、完成度の高さはアイドルものとは一線を画しています(当然ですね)。私がお薦めするのは当CD第5番目の「Dear」という曲です。これは異国にいる彼を待ちわび、クリスマスの頃に帰ってくることを願う女性が手紙を読み上げる形を取った曲です。オペラにも「手紙の場面」があったりしますが、あれですね。広瀬香美はこれをバラードにして歌い始め、やがてはゴスペル調に変えていきます(これがすんごいです)。しかも歌うのはスーパー・ボーカリスト。持てる声域を使い切っています。そして音楽はどんどんクレッシェンドしてきますから、いやでも高揚してきます。ポップスにしては珍しく演奏時間は延々7分にも及びます。全く興奮してしまいます。広瀬香美、一世一代の大熱演です。

広瀬香美は溢れるような才能を持った人ですが、さすがに「Dear」を超える名曲はその後出ていないようです。実は3年ほど前、広瀬香美はこの曲をCMソングとしてリメイクし、快適なテンポの曲に衣替えして発表しました。が、これほどすばらしい曲をリメイクする必然性は全くなく、抜け殻のようになった「Dear クリスマス・バージョン」になっていました(T_T)。広瀬香美ほどの人にしても、自分が築いた高みを超えられないとは面白いものです。

ともあれ、大変な名曲であります。「俺はクラシックしか聴かんぞ!」という頑固な主張をお持ちでもなければ、騙されたと思ってぜひ聴いてみて下さい。とてもいいですよ。クリスマスにぴったりのはずです。


12月22日:「ときめきウィークエンド」に「ジョンレノンを偲ぶ」を追加しました。クリスマスにはジョン・レノンです。え?クラシックじゃないのかって?実は本気でジョン・レノンです。どうか許して下さい。


12月21日:CD試聴記に超短期企画*隣町のオケを聴く*シリーズ第4回、「クルト・マズア(後編)」を追加しました。

各地で雪が降っているようです。昨年の今頃はよほどの奥地でもなければスキー場に雪がなかったのですが、今年はきゅーっと冷え込んだために、どのスキー場でも全面滑走可となっています(くやしい!)。いつもの年でしたら、とっくに斜面を滑降しているところですが、今年ばかりはそうもいきません。子育てに追われる女房さんをおいて雪山に行ったら、帰りにはきっと家のドアは閉められて、中に入れてもらえないでしょう。

気になるのは毎年定宿にしていた苗場福島屋旅館です。冬にあそこに行かないなんて、考えられません。スキーファンの読者がもしいらっしゃったら、ぜひ泊まってあげて下さい。宿のおやじに「浦和の伊東の紹介だ」といえば、夜、囲炉裏で死ぬほど八海山を振る舞ってもらえることでしょう。


12月20日:CD試聴記に超短期企画*隣町のオケを聴く*シリーズ第3回、「クルト・マズア(前編)」を追加しました。

ううう、超短期企画で始めたのに、これでは年内に終わるでしょうか?心配になってきました。


12月19日:ホールとオケ

バブル以降の日本には立派な音楽ホールが建ち並ぶようになりました。どんな町にも贅を尽くした音響効果抜群のホールがあるようです。しかし、贅を尽くしたホールを造ったところで、箱を埋める優れたオケや聴衆がいなければ話にもなりません。

私見ですが、欧州には優れたホールが今の日本ほどにはないような気がします。世界的に名高いアムステルダムのコンセルトヘボウやウィーンのムジークフェラインザールは例外に当たるかもしれません。外観は立派でも音響は必ずしも立派とは言えない場合もあるようです。しかし、それを埋める優れたオケも聴衆も存在するのですから、どちらがいいか考えるまでもないかもしれません。

コンセルトヘボウの場合は、木の素材感を活かした信じがたいほどすばらしい音響を味わえます。全く驚嘆すべきホールであります。私はアムステルダム・コンセルトヘボウ管をシュターツカペレ・ドレスデンの次に愛好しておりますが、それはあのホールの響きが忘れられないからでもあります。あのようなホールがあれば、練習中からお互いをよく聴き合い、優れた演奏を生み出すことが可能になるに違いありません。やや凡庸な指揮者を長期にわたって首席の地位に戴きながらも世界最高水準の技術を維持できたのは、あのホールのもつ最高の響きによるところが多いのではないかと私は考えています。

ここで不思議になるのは、シュターツカペレ・ドレスデンの音色です。独特の美しい音色で知られる当団ですが、優れたホールに恵まれたという話は聞いたことがありません。1984年に総額250億円もかけて再建されたゼンパー・オパーも音響は第一級と言われたことはかつて一度もないはずです。しかも、ゼンパー・オパーが再建される前までは、当団はクルチュア・パラスト(文化宮殿)という建物でコンサートを開いていたのです。が、これは音響効果を云々する以前のホールなのです。

クルチュア・パラスト外観クルチュア・パラスト外観

日本でいえば、○○市公会堂といったところか。なお、この写真では実物よりも50%増しでよく見える。ところで、共産主義諸国はどうして「文化(クルチュア)」という言葉を好んだのだろうか?


これは旧東ドイツの首脳部が共産主義の大会などを開催するために作ったようなホールで、音響の悪さは折り紙付きです。その証拠に、クルチュア・パラストではコンサートの時に、無様な反響盤を舞台の左右に並べ、少しでもオケの音が聴衆に届くように涙ぐましい努力をしているのです。私が不思議に思うのは、それほど劣悪な条件のホールを使用していながら、なぜ当団が類い希な音色を維持できたのかということです。「ドレスデンの音楽大学出身者が多く、奏法をはじめ、伝統を上手に伝承してきたからだ」ということが答えのひとつとして挙げられますが、それだけではあの音色を維持できないのではないかと思います。優れたホールなしに最高の音色を維持してきたシュターツカペレ・ドレスデンは、もしかしたら、現代の奇跡なのかもしれません。


12月17日:多勢に無勢

私はメーラーにEudora Pro ver.3.0を愛用していますが、ついにこのメーラーもアップグレードするか、マイクロソフトのOutlook Expressにでも乗り換えなければならなくなってきました。というのも、かつてはメールを使う人の常識であった「半角カタカナは使わない」とか「機種依存文字は使わない」というルールがパソコン利用者の急激な増大等の理由によって、ほとんど守られなくなってきたからであります。

Windowsマシンを買うと最初から付いてくるメーラーであるマイクロソフトのOutlook ExpressではHTMLファイルで送信するのが初期設定されているばかりではなく、半角カタカナや機種依存文字を使ったテキストでも簡単に送信してしまいます。同じメーラーを使っていれば、HTMLファイルも簡単に読めるし、半角カタカナや機種依存文字を通し、何ら障害がなく受発信できるのです。しかし、私のようにマイクロソフトのメーラーを使っていない場合、たちまち文字化けメールが送られてくることになります。今まではそうしたメールを送ってくる人に対して、メールのルールを教えていれば事足りていたのですが、そうもいかなくなってきました。何といっても最初からタダで付いてきているメーラーですから、誰もが使います。圧倒的多数のパソコン・ユーザーはマイクロソフトのメーラーを使うようになったようです。そうなりますと、「半角カタカナや機種依存文字を読めない旧態依然のメーラーを使っている方が悪い!」という恐るべき事態が招来してしまいます(T_T)。仕事の連絡などでお客様から文字化けメールをいただくと、しつこくメールの設定方法を説明するわけにもいかず、悶々としてしまいます。私はEudoraは使いやすくて好きです。女房さんはAL-MAILを自宅では利用しています。がこのような使いやすいメーラーがマイクロソフトのゲリラ的な問答無用メーラーによって駆逐されてしまうのはなんとも嘆かわしいことであります。「悪貨は良貨を駆逐する」とまでは言いませんが、深く悩む今日この頃であります。


12月16日:CD試聴記に超短期企画*隣町のオケを聴く*シリーズ第2回、「ボンガルツのブルックナーを聴く」を追加しました。


12月15日:CD試聴記に「R.シュトラウスのドン・キホーテほか」を追加しました。セル指揮クリーブランド管の演奏です。


12月14日:「シュターツカペレ・ドレスデンのページ」に「資料集め その2」を追加しました。

年末恒例レコ芸の「レコード・アカデミー賞」が発表されたようですね。交響曲部門ではヴァントが指揮したブルックナーの交響曲第9番が受賞しています。今年も予想通りでしたね(@_@)。

さて、いつも疑問に思うのは、あの賞の対象CDです。今年は必ずしも大手でないレーベルからいくつもの注目CDが発売されていますが、それらは対象に含まれているのでしょうか?例えば、私はクーベリックが指揮したオルフェオのモーツァルト、ベルリオーズ、ブラームスの3枚に接し、作ろうか作るまいか迷っていた「クーベリックのページ」を開設してしまうほど感激しました。そのようなCDは選考の対象になっているのでしょうか?どうもそうではないような気がします。

海賊盤を除外するのであれば、まだ理屈は通ります。が、どうもあの賞は大手レーベルが必ず何かの賞をもらうようになっているように見えてなりません。レコ芸も趣味の同人誌ではなく、商業ベースでものを考えているわけですから、広告主を尊重することについては、やむを得ないと言えば、やむを得ません。でもどうにも腑に落ちませんね。

さて、私にとって今年最高のCDといえば何だったでしょうか。普段聴いているCDのほとんどが旧譜なので、自分でも選択に迷うのですが、ひとつ選ぶとすれば、やはりクーベリックの「モーツァルト 交響曲第40番、41番」(オルフェオ)でしょう。旧譜の再発を含めれば、良さを再認識させてくれたという意味ではカラヤンの「サロメ」(EMI)でしょう。あれ以来、私はしばらくオペラ漬けになってしまいました。さて、皆さんはいかがでしょうか?


12月13日:古い録音

山野楽器でCDを物色していたところ、またもや例の店員さんが...。私が手に取っていたCDを見てこう言います。

「伊東さん、そのCDお持ちですか?5年ほど前にも発売されたんですけど、たちまち売れ切れたんです。今回もすぐなくなるかもしれませんよ!」

こんなことを言われたら、誰でもすぐに買ってしまいますね(^^ゞ。何のCDかと申しますと、有名なメンゲルベルクのチャイコフスキー録音集であります。メンゲルベルクのチャイコフスキーは大変有名で、友人宅で聴いたことはありましたが、CDは持っていませんでした。国内盤4枚組で定価12,000円のところ、どういうわけか特価8,900円?となっていたこともあり、「これは安い!」と思って買ってしまいました。でもよく考えてみれば、1枚あたり2,225円です。全然安くないですね(^^ゞ。私は国内盤は高いうえ音質が悪いので買わない主義でしたが、またもや店員さんの巧みな話術に引っかかってしまったのであります。恐るべし、山野楽器(本店ではありません。念のため)。

CDジャケットSPからの復刻によるメンゲルベルク/チャイコフスキー
テレフンケン発売録音集大成
メンゲルベルク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管、他
録音:1937〜41年
TELDEC(国内盤 WPCS-4327〜30)

さて、みずなちゃんにも、女房さんにもガンガン聴かせたこのメンゲルベルク。やはり楽しいですね。しつこくポルタメントを繰り返すのが玉に瑕なのですが、それさえ気にならなければ(普通の人は気になると思うけど...)、ものすごく楽しめると思います。前にも書いたことがありますが、メンゲルベルクは受けを狙って冗談で大げさなポルタメントやルバートを使ったわけではなく、真剣そのものだったわけです。笑い出したくなるほど大時代的な演奏ではあるのですが、1937年録音の「悲愴」などを聴くと、やはりスキのない演奏で、盛り上がること著しいものがあります。第4楽章など、笑うどころか、思わず耳を澄ましてしまいますね。4枚のCD中、37年録音の「悲愴」で「ぶううううん」というハムノイズがずっと入っていることを除けば、音質も上々です。ノイズもほとんど気にならないでしょう(これには個人差がありますが...)。テレフンケンの当時の録音技術と、現在の復刻技術には脱帽であります。60年も前の録音といえば、ノイズの中から楽音を聞き取るようなイメージになりがちですが、本当にクリアです。これほど高品質の録音だからこそ長く愛聴されてきたんですね(ハムノイズだけは現在の復刻技術をもってしても除去できなかったんでしょう。残念です)。

チャイコフスキーの音楽は浪花節的で私は大好きです。クラシック音楽を聴き始めてから、数年経ったころ、「チャイコフスキーはクラシック入門用で、あんなものは早く卒業しなきゃ」と私に忠告した知人がいました。すごい言葉ですね。その時私は非常にショックを受けました。チャイコの5番、6番にのめり込んでいた頃でしたので、自分のレベルがすごく低いのではないかと恥じ入ったのです。一時はチャイコフスキーのLPを買うのも恥ずかしくなったことがあります。しかし、チャイコフスキーの音楽は本質的に人を楽しませるようにできており、しかも構成がしっかりしていてすばらしいと思います。もちろん、最初の出会いから20年以上経った今でも私は昔と変わらず愛好しています。とても馬鹿にされる音楽ではないと思うのですが、みなさんいかがでしょうか?私に忠告した知人は、チャイコフスキーを卒業して、今は一体何を聴いているのか、ふと考える私でありました。

なお、このCDの収録曲は以下のとおりです。

DISC 1

交響曲第6番 ロ短調 作品74「悲愴」(37年録音)
弦楽セレナーデ ハ長調 作品48(38年録音、SPから復刻)
アムステルダム・コンセルトヘボウ管

DISC 2

交響曲第6番 ロ短調 作品74「悲愴」(41年録音)
弦楽セレナーデ ハ長調 作品48
(38年録音、メタル・マザーからの復刻テープによる)
アムステルダム・コンセルトヘボウ管

DISC 3

交響曲第5番 ホ短調 作品64(40年録音)
ベルリンフィル
序曲「1812年」作品49(40年録音)
アムステルダム・コンセルトヘボウ管

DISC 4

ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23(40年録音、テレフンケン版)
ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23(40年録音、ウルトラフォン版)
ピアノ演奏:コンラート・ハンゼン
ベルリンフィル


12月12日:当団のお薦め盤

THE MOSTLY CLASSIC 12月号に、シュターツカペレ・ドレスデンの記事が載っていますね。わずか2ページ分ですが、思わずニンマリしました。どうせなら、巻頭オールカラー30ページ大特集でもやってもらいたいところですが、2ページでも許してあげましょう(^O^)。タイトルには「古都で育まれた極上のシルクに似た伝統の音色」とあります。今度は「シルク」ときましたね。私もこのオケの音色を表現するのには大変苦慮していますが、確かにシルクに聞こえる時もあります。最近私は、「木質感」では足りないな、このオケの音色の一面しか表現していないかな?などと考えるようになってきました。

さて、そのページには「自宅で味わうこのオーケストラ」というコーナーがあり、6枚のCDが紹介されています。私がいうところのメジャーな録音で、筆頭はカラヤンの「マイスタージンガー」(これはもうお約束ですね)。他にはクライバーの「魔弾の射手」、ブロムシュテットのブルックナー交響曲第7番、同じくブロムシュテットの「英雄の生涯」、シノーポリのベートーヴェン交響曲第9番、同じくシノーポリのベルク「抒情組曲からの3つの楽章、他」が挙げられています。誰もがすぐ買える当団のCDとなると、やはりこんなラインナップになるのでしょうか?私にその欄を担当させてくれれば、もう少し別のCDを強引に載せたいところですが...。皆さんでしたら、何を取り上げますか?


12月10日:こんにちは、みずなです。今日は4ヶ月目の誕生日です。ということで、お母さんに頼んで「みずなの成長日記」に「3ヶ月のみずな」を書いてもらいました。


12月9日:CD試聴記に超短期企画*隣町のオケを聴く*シリーズ第1回、「コンヴィチュニーのブルックナーを聴く」を追加しました。


12月8日:「シュターツカペレ・ドレスデンのページ」に「スウィトナーのモーツァルトを味わう」を追加しました。曲目は「ハフナー」「リンツ」「プラハ」。有名なCDですね。もしかしたら、これはメジャーな録音に入るかな?


12月7日:クラシック千夜一曲

宮城谷昌光(みやぎたに まさみつ)。この名前をご存知でしょうか。中国の歴史小説で有名な現代の作家です。著作は「重耳(ちょうじ)」、「奇貨居くべし」など多数。最近、あの諸葛孔明が自らの規範とした政治家を描いた「楽毅(がくき)」全4巻が完結したばかりです。

先週、新聞の新刊案内を見ると、その宮城谷さんの名前が載っていました。しかもタイトルは「クラシック千夜一曲」(集英社新書、680円)となっています。これには「!」でした。最初私は宮城谷さんがもうひとりいて、別人がクラシック音楽の本を書いているのではないかと思いました。あるいは私の記憶違いで、歴史小説を書いているのは別の名前の人かと思ったりしました。しかし、そのいずれでもないようです。あまりに気になったので、今週末は近所の本屋を数軒かけずり回って、やっとその本を入手しました。やはりあの宮城谷さんでした。まさか宮城谷さんがクラシック音楽に詳しいとは思ってもみなかったのですが、よく考えれば、私のような人間でさえホームページで駄文を書きまくっているのですから、プロの作家にしてみれば音楽評論などいともたやすいでしょう(そうかな?)。

これは非常に面白い本です。本の構成は、宮城谷さんが勧める名曲の紹介と聴き比べなのですが、その評論はかなり辛口であります。特に私とは好みも評価も大幅に異なっているために、よけい辛口に感じられます(クレンペラーはあまり評価されていないようです。ヴァントは絶賛)。しかし、きちんと丁寧に音楽を聴き、自分の言葉で音楽を語り、しかもその文章が巧みであるため、「なるほど、そうだな」などと思ってしまいます。この本を読んだら、宮城谷さんの推薦したCDを買いに行きたくなる人が多いのではと思います。

この本のもうひとつの面白さは、作家宮城谷さんの音楽を語る言葉を読めることにあります。どのページをめくってみても、宮城谷さんは難しい言葉を使わずに、分かりやすく表現しています。それにしても、作家はすごいですね。音楽を語る言葉を持っているんですから。私はホームページの文章を書いていていつも言葉に詰まってしまいます。毎日言葉と格闘しているプロの作家だからこそ、あのような名著を出版することができるんでしょう。この本、もしかしたら続編が出るかもしれません。「クラシック千夜一曲」というわりにはまだ10曲しか紹介されていないからです。楽しみです。


12月6日:「クーベリックのページ」に「マーラーの交響曲第5番を聴く 後編」を追加しました。これを聴いて、ついに私はゾンビと化してしまいました。恐ろしい演奏です。


12月5日:リンクのページに「NORDIC FOREST 北欧のクラシック音楽」を追加しました。トップページには「北欧は知られざる曲の宝庫 皆さんの1曲を見つけて下さい」と書いてありますが、このページを見るとびっくりです。知っているつもりだった北欧の音楽についての自分の認識不足を思い知らされます。

このページの良さは内容の広さと深さですが、それだけではありません。大変美しく、読みやすいページレイアウトになっていることもすばらしいと思います。トップページからして品の良いページだと思います。まずは訪問してみましょう。大推薦のページですよ。


12月4日:買い物

今日は女房さんと一緒に、自動車に取り付けるチャイルド・シートを買いに行ってきました。買い物はすぐに終わったのですが、肝心の取り付け作業が大変でした。最初店員さんにやってもらおうとしたところ、「訴訟沙汰になることもあるのでできません。分からないところだけアドバイスいたします」とのこと。仕方なく添付されたマニュアルを見ながら夫婦でえっちらほっちら作業を始めたのですが、なかなかうまくできません。マニュアルを見てもチンプンカンプンです。あのマニュアルで取り付けられる人がいるんでしょうか?そのうちにみずなちゃんが泣き始め、事態は緊迫してきます。やむなく、当の店員さんに無理にお願いして触ってもらうことになりました。が、何と、その店員さんも取り付けられませんでした(>_<)。そうこうしているうちに今度は日が暮れてきましたので、チャイルド・シート専門のベテラン社員が登場。たちまち装着してくれました。これで一安心。

チャイルド・シートの取り付けが非常に面倒くさいというのは以前から噂で耳にはしておりましたが、まさかあれほどとは。来年4月からは法律で義務づけられるというのに、あんなわかりにくいマニュアルでは困ります。もっと分かりやすく作り直してほしいものです。

キッズ関係の話を続けます。このところ、我が家ではいろんなおもちゃを買い集めたのですが、様々な発見があって面白いです。例えば、音関係ではこんなことがありました。我が家には、寝ている赤ちゃんの頭上に置くおもちゃが2種類あります。ひとつは「プレイ・ジム」といい、赤ちゃんが、上からぶら下がっているひもを引っ張ると、「イッツ・ア・スモール・ワールド」が流れます。もうひとつは「メリー」といい、ゼンマイ仕掛けのオルゴールによって「夢路(?)」という曲が流れてきます。曲が違うだけで何の差もないように見えますが、実はみずなちゃんは「イッツ・ア・スモール・ワールド」には見向きもしてくれません。「夢路」の方は、時々じっと聴いているように見えます。不思議であります。その理由ですが、おそらく、「イッツ・ア・スモール・ワールド」の方が電子音による音楽だからではないかと思われます(というより、それ以外に思いつかないのです)。

私は電子音による音楽はどうも不自然だと考えています。確かに音階はあるけれども、自然の音ではありません。何かと何かが触れ合って音が出てくるとか、人間の息吹によって音が出てくる訳ではないからです。オルゴールもあまり変わらないではないかという方もおられると思いますが、あれは「何かと何かが触れ合って」いるはずです。私の勝手な思いこみかもしれませんが、もしかしたら、赤ちゃんは電子音による音楽を音楽とは認識していないのかもしれません。どうでしょうか?これからも観察を続けたいところですね。


12月3日:マーラーの音楽
 
ブルックナー、マーラー、R.シュトラウスは一緒くたにして「後期ロマン派」といわれます。共通点は、前世紀末に大規模な管弦楽による壮麗な音響絵巻を作り出したことでしょう。しかし、意外にも、共通点はそれだけなのかもしれません。ブルックナーは自分が信仰する「神」の世界にだけ目を向けていましたし、R.シュトラウスは現世に我が世の春を見いだし、満足する作曲家だったでしょう(ちょっと語弊があるかな?)。一方、マーラーは指揮者として大成功を収めていたわりには、地獄と天国とを生きたまま行き来していたような人で、人間世界のありとあらゆる艱難辛苦・喜怒哀楽を音楽に表しています。全く三者三様なので、気分によって聴きたい作曲家も変わってきます。

ただ、マーラーばかりは聴くのに勇気が要ります。長いからではありません。私だけか感じるのかもしれませんが、恐ろしいことに、マーラーの音楽には麻薬のような効果があるのです。麻薬的効果はブルックナーにもかなりあります。が、マーラーの音楽の方が強く、病人を作りそうな恐ろしい効果があります。マーラーはオーディオファンが喜ぶような派手派手しい音楽を書いたように見えます。しかし、それは表面だけで、内面は病的であります。その音楽を聴いていると、まるでゾンビに取り憑かれたようにマーラー漬けになってしまうのです。特にバーンスタインのマーラーにはそのゾンビ効果が著しいのではないかと思われます。

昨日「クーベリックのページ」で取り上げた交響曲第5番は、かっこいいトランペットソロで始まり、オケ全体による輝かしいロンドで終わる、マーラーとしては明るめの曲ですが、やはりゾンビ効果があります。第2楽章で弦楽器だけで演奏される暗い旋律を聴くと、短いフレーズであるにもかかわらず、「マーラーは本当に地獄に行ったことがあるのではないか?」と私は真剣に想像したりします。だから、ひとたびじっくり聴き始めると、ゾンビに後ろから羽交い締めにされるような気がしてくるのです。そうなりますと、マーラーからしばらくは逃れられません。ずっとマーラーを聴かなければならないのです。クーベリックの旧盤はまだ軽微なゾンビなのですが、新盤が困りものです。来週アップする予定ですが、その頃私は完全なゾンビになっているかもしれません。ああ、なんと恐ろしい作曲家なのでしょうか。


12月2日:「クーベリックのページ」に「マーラーの交響曲第5番を聴く(前編)」を追加しました。

これは最近出たaudite盤ではなく、DGの旧盤です。後編は来週までお待ち下さいm(__)m。いっぺんに書ききれなかったためです。前編だけでも少し舌足らずになってしまいました。そのうち密かに書き換えるかもしれません。


12月1日:「クレンペラーとの対話」

先頃復刻された「クレンペラーとの対話」(ピーター・ヘイワース編、佐藤章訳、白水社)を読みました。え?「じゃあ、お前は今まで読んでいなかったのか」ですって?てへへ。はい。そうなんです。

私がホームページを立ち上げる時、どういうわけか、本当にどういうわけかなのですが、クレンペラーのページを作ることになりました(^^ゞ。その際に、「こりゃ、あの本は読んでおいた方がいいかな?」と思い、各地の本屋さんをひたすら捜し回りました。が、どこからも出てきません。神保町の古書店からさえも出てきませんでした。音楽関係の古書店として有名な「古賀書店」でも「そればかりはダメだ」と言われていたのです。私が学生の頃はあちこちで見かけたのですが、いつでも買えると思っていたら、いつの間にかどこでも買えなくなっていたのですね(だからこそ本も見つけたらすぐに買わねばならないのであります!)。

ですから、今回の復刻は大変喜ばしいことでした。朝方、新聞紙上で復刻の案内を見たときには飛び上がらんばかりに喜んでしまいました\(^o^)/。しかし、価格が大幅に上がったのは、白水社にしてやられたという感じですね。本文240ページほどの書物が3,200円というのは、ちょっと足元を見すぎではないかと思います。

それはともかく、さすがに面白い本です。中には目を丸くしてしまった文章もありますが。例えば、クルト・ワイルの歌劇「マハゴニー」について、クレンペラーは驚くなかれ、「わいせつである」と言い切っています。何だかクレンペラーらしくもない発言だと私は思うのですが、どうでしょうか。

クレンペラーについては、昨年「クレンペラー 指揮者の本懐」発刊があったばかりですし、注目されているようです。昨今大指揮者が払底してきたことによって、過去の伝説的指揮者が脚光を浴びてきているんですね。そのうちに劇画で「クレンペラーの生涯」なんていうものが現れるかもしれません。いやいや劇画では音楽を表現できませんね。やっぱり映画かな?トスカニーニの映画があるんだから、クレンペラーの映画があってもいいはず。誰か破天荒な映画を作ってくれないかなあ。


(An die MusikクラシックCD試聴記)